PISパートナーズ コラム

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「人が勝手に育つ職場」 メルマガ8号より

自分とこれまでの上司の関係を振り返ってみても、仕事の仕方を上司から手取り、足取り教えてもらったことは、少ないような気がします。仕事の仕方は、先輩社員や同僚から教えてもらうことが多かったと思います。

前職のリクルートでの新人時代の経験です。管理職は新人の自分からは、とても遠い存在でした。「忙しそうにしているからこんなことを聞いていいんだろうか」と遠慮して聞けなかったことを覚えています。

その代わり、何人かの先輩社員には、「ウルサイ」と言われるぐらい聞きまくっていたことを覚えています。

自分が一番成長したと思えたのは、2年目になって後輩の新人や新人営業アルバイトを教えた時だったと思います。リクルートでは、職場によっては2年目でも新入社員や新人営業アルバイトの教育やめんどうを見るのが当たり前になっていました。

ロールプレイの相手役などで教える側になってみると、実は自分がよくわかっていなかったことや、足りなかったところが見えてきます。この辺を、うまくできるようにしようと意識したり、後で先輩に聞いたりするわけです。

また、教えるために、自分の体験を整理して、教訓らしきものを導き出していました。

この教訓が、あとあと自分が仕事をする上で役に立ったのです。教える機会がなかったら、素通りしていたことがたくさん身に付いたような気がしています。

また、社内研修などで一緒になった同期の人間と話すことが刺激になりました。
自分よりも成果を出している同期や自分以上にがんばっている同期がたくさんいました。彼らの苦労話や仕事に対するスタンスを直接聞いて、「落ち込んで場合じゃないな、よし、自分も頑張ろう」と思ったものです。

みなさんも、上司以外の職場の人間や会社の同期、他部署の人間からの刺激や仕事振りを、「糧」にして成長したという実感はないでしょうか?

富士ゼロックス総合教育研究所の若手・中堅社員2300人(2009年)の調査では、上司に直接育成されたという割合は意外に少ないという結果が出ています。

調査によると「一回り大きく成長したな」と実感できるほど最も影響を受けている先として、上司の割合は38.5%です。一方、同じ職場の上位者・先輩(32.3%)、同僚・同期(6.1%)、後輩(1.4%)、他の職場の上位者(4.6%)です。つまり、成長に最も影響を与えた存在として、上司以外が6割強を占めているのです。



では、上司である管理職は、人の育成に、メインの役割を果たさないのでしょうか?

そんなことはありません。むしろ、厳しい市場環境を迎え、人材育成における管理職の役割は、一層重要になっているといえます。 管理職には、「人を育てる職場風土を作る」という、重要な役割が残っています。

そもそも職場風土は管理職だけで作るものでは、ありません。しかし、職場の風土作りに一番影響力をもっているのは、管理職です。

「人を育てる職場風土づくりには」、部下同士が助け合ったり、教えあったりすること を管理職が奨励することが必要です。また、管理職自らが率先して仕事で困ったり、行き詰った部下に、相談するところをメンバーに見せることも効果的です。そのような ことによって職場で教えあったり、アドバイスする雰囲気ができてきます。

管理職が、個別の部下をロールプレイや同行訪問で集中的に一生懸命育成することも可能ですが、その方式ではせいぜい2人が限界です。

それよりも、職場のNo.2や先輩、場合によっては同僚同士が教える、教え合う風土を作ったほうが、管理職の「体」は楽になります。また、学ぶ側の期待にも応えられるのです。

また、こんなことも可能です。たとえば、ある部下に、後輩を教えさせるのです。人は、教えることによって本人が学びます。教えさせることで本人と後輩の、二人の育成を同時に行うことができます。まさに一石二鳥です。

「部下の育成は、管理職じゃないとできない」という先入観を取り払ってみませんか。